全身バランスまで考えた噛み合わせを作ります
原因の分からない頭痛や肩こり、めまい。
あるいは、お口周りの改善しない不調。
その症状、もしかしたら歯の「噛み合わせ」の乱れが関係しているかもしれません。
噛み合わせは、単に食べ物を咀嚼するためだけのものではありません。
お口全体の健康、さらには全身のバランスを保つ上でも、非常に重要な役割を担っています。
当院では、一本一本の歯を診るだけでなく、顎の関節や筋肉、そして患者様の生活習慣まで含めた、総合的な観点から噛み合わせの問題と向き合います。
表面的な症状を取り除くだけでなく、不調の根本原因を見つけ出し、健やかな毎日を取り戻すためのお手伝いをいたします。
そもそも「噛み合わせ」とは
噛み合わせとは、上下の歯がどのように接触するか、その関係性のことを指します。
専門的には「咬合(こうごう)」と呼ばれ、単に歯と歯の接触点だけでなく、顎を動かす筋肉や、顎の関節(顎関節)が三位一体となって、調和の取れた機能をしている状態が「良い噛み合わせ」と言えるのです。
このバランスが何らかの理由で崩れてしまうと、特定の歯に過剰な負担がかかったり、顎の関節や筋肉に無理な力が加わったりして、様々な不調を引き起こす原因となります。
噛み合わせが乱れる主な原因
長年の生活の中で、噛み合わせは少しずつ変化していきます。
その主な原因として、以下のようなものが挙げられます。
- 虫歯や歯周病による歯の欠損や移動
- 治療から時間が経ち、高さが合わなくなった詰め物・被せ物
- 親知らずなどが原因で、歯並びが変化した
- 歯ぎしりや食いしばり、頬杖をつくなどの癖
- ストレスによる無意識の食いしばり
これらの要因が複雑に絡み合い、お口全体のバランスを崩していくのです。
噛み合わせの乱れが引き起こす、さまざまな不調
噛み合わせのバランスが崩れると、お口の中だけでなく、全身にまで影響が及ぶことがあります。
お口の中に現れる症状
- 特定の歯がすり減る、欠ける、割れる
- 詰め物や被せ物が頻繁に外れる
- 歯の根元がくさび状に削れる(くさび状欠損)
- 歯周病が悪化しやすい
- 知覚過敏の症状が出る
顎やその周りに現れる症状
- 口を開けると顎がカクカク鳴る
- 口が大きく開けられない
- 顎の関節やその周りの筋肉が痛む
全身に現れる症状
- 原因不明の頭痛や肩こり、首のこり
- めまいや耳鳴り
- 目の奥の痛み
- 睡眠の質の低下
もし、このような症状に心当たりがあり、どこで相談して良いか分からずにお困りでしたら、一度、歯科医院で噛み合わせを確認することをおすすめします。
当院の噛み合わせ治療の考え方
噛み合わせの治療は、非常に繊細で、多角的な視点が求められます。 当院では、以下の考え方を基本とし、慎重に治療を進めてまいります。
精密な診断から始める
不調の原因がどこにあるのかを正確に見極めることが、治療の第一歩です。
お口の中を拝見するだけでなく、顎の動きや筋肉の状態、そして生活習慣に至るまで、詳しくお話を伺います。
その上で、CT撮影や咬合紙(こうごうし)という色の付いた紙を噛んでいただき、歯の接触状態を調べる検査などを行い、問題の根本原因を突き止めます。
全体的な口腔機能への配慮
噛み合わせの治療は、単に歯の高さを調整するだけではありません。
顎の関節が本来あるべき楽な位置で、筋肉に余計な緊張がなく、スムーズに機能することを目指します。
歯並びや歯の形、失った歯の有無など、お口全体のバランスを考慮した上で、治療計画を立案いたします。
歯を削らない、保守的なアプローチ
「噛み合わせの調整」と聞くと、すぐに歯を削ることを想像されるかもしれませんが、当院では安易に歯を削ることはいたしません。
一度削ってしまった歯は、二度と元には戻らないからです。
まずは、後戻りのできる「マウスガード(スプリント)」を用いた治療や、生活習慣の改善指導など、できるだけ歯にダメージを与えない方法から始めることを基本としています。
噛み合わせ治療の具体的な進め方
当院では、精密な診査・診断の結果に基づき、患者様一人ひとりのお口の状態に合わせた治療法を組み合わせてご提案します。
マウスガード(スプリント)を用いた治療
まず行うことが多いのが、マウスガード(スプリント)と呼ばれる透明な装置を用いた治療です。
就寝中などにこの装置を装着することで、歯ぎしりや食いしばりから歯を守ると同時に、顎の筋肉の緊張を和らげ、顎関節を安静な状態に導きます。
これにより、顎が本来あるべきリラックスした位置を見つけ出し、症状の緩和を図ります。
矯正治療によるアプローチ
歯並びそのものが原因で噛み合わせが乱れている場合には、矯正治療が必要となります。
歯を適切な位置へ移動させることで、お口全体のバランスを根本的に整え、特定の歯や顎関節への負担を軽減します。
詰め物・被せ物による調整
すり減ってしまった歯や、高さが合わなくなった古い修復物を、精密なセラミックなどで作り直すことで、噛み合わせの高さを調整する方法です。
全体のバランスを考慮しながら、ミリ単位の精度で修復物を作製し、安定した噛み合わせを再構築します。
顎関節症でお悩みの方へ
ご自身でできる簡単なセルフチェック
顎関節症の兆候の一つに「開口障害(口が開きにくい)」があります。
ご自身の指をそろえ、縦にして何本お口に入るか、試してみてください。
無理なく指が3本(4~5cm程度)入れば、正常な範囲であると考えられます。
もし、指が2本程度しか入らない、あるいは開ける際に痛みを感じる場合は、顎関節症の可能性があります。
より詳細な診査のための、歯科用CT撮影
通常の診査で顎関節の骨の変形などが疑われる場合や、より詳しく状態を把握したいというご希望がある場合には、歯科用CTによる精密検査(自由診療)を行います。
CTを用いることで、顎の骨のすり減りや変形、関節円板というクッションの役割をする組織の位置などを立体的に把握することができ、より正確な診断に繋がります。
ボツリヌス治療によるアプローチ
す顎関節症の症状が、強い歯ぎしりや食いしばりによって引き起こされている場合、当院では「ボツリヌス治療」という選択肢もご用意しています。
これは、美容医療で知られるものですが、歯科領域では筋肉の異常な緊張を和らげる目的で応用されています。
緊張が続いている咀嚼筋(咬筋など)にボツリヌス製剤を注射することで、筋肉の力を適度に弱め、無意識に行われる過剰な食いしばりを緩和させます。
これにより、顎関節にかかる負担が直接的に軽減され、痛みの緩和や、顎の動かしやすさの改善が期待できます。
効果には個人差がありますが、筋肉の緊張が強い方には有効な場合があります。
また、歯ぎしりや食いしばりに対しては、歯を守るための「マウスガード(ナイトガード)」も有効な治療法です。
ボツリヌス治療とマウスガードを併用することで、筋肉の緊張緩和と、歯の保護の両面からアプローチすることも可能です。
お悩みの方は、一度ご相談ください
噛み合わせや顎の不調は、日常生活の質に大きく影響します。
「これくらいなら大丈夫」と我慢せず、専門家である私たちにご相談いただくことが、解決への第一歩です。
私たちは、患者様のお悩みと真摯に向き合い、その原因を丁寧に見つけ出します。
そして、健やかで快適な毎日を取り戻すためのお手伝いをいたします。
どうぞ、お一人で悩まず、お気軽にお声がけください。

