虫歯の進行段階と治療法

虫歯は、その進行度によってC0からC4までの5段階に分類されます。
段階が浅ければ浅いほど、歯への負担が少ない治療で改善することが可能です。 ここでは、各段階の状態と当院での治療方針をご説明します。

C0：ごく初期の虫歯（脱灰）

歯の表面からミネラルが溶け出し、白く濁って見える状態です。
まだ歯に穴は開いておらず、痛みなどの自覚症状もありません。
この段階では、歯を削る必要はほとんどありません。
唾液に含まれる成分が歯の表面を修復する「再石灰化」という働きを活かすことで、歯を削らずに治癒を目指すことが可能です。

再石灰化を促すためのアプローチ

歯磨き指導

再石灰化を促すには、お口の中を清潔に保つことが第一です。
虫歯の原因となる歯垢（プラーク）を、毎日の歯磨きでいかに効果的に除去できるかが鍵となります。 当院では、患者様一人ひとりのお口の状態や歯並びに合わせた適切な歯磨き方法を丁寧にお伝えします。

フッ素塗布

フッ素には、歯の質を強くして酸に溶けにくくする効果や再石灰化を助ける働きがあります。
歯科医院で高濃度のフッ素を塗布することで、歯の守る力を高め初期虫歯の進行を抑制します。

PMTC（専門家による歯の清掃）

歯磨きでは取り除けない、歯石やバイオフィルム（細菌の集合体）を専用の器具を用いて徹底的に除去します。 お口の中の細菌数を減らし、再石灰化が起こりやすい環境を整えます。

C1：エナメル質の虫歯

歯の外側にある硬い組織「エナメル質」が溶かされ、小さな穴が開いた状態です。
冷たいものが稀にしみることもありますが、痛みを感じることはまだありません。 C1の段階でも、基本的にはC0と同様に歯を削らずに経過観察を行うことが多くあります。 ただし、穴が大きく食べ物が詰まりやすい場合や見た目が気になる場合は、範囲で虫歯を取り除き修復する処置を行います。

C2：象牙質の虫歯

歯への負担を抑える、当院の精密な虫歯治療
C2の治療では、虫歯に侵された象牙質を削り取る必要があります。
当院では、患者様の歯を少しでも長く健康に保つため以下の点にこだわり、精密な治療を徹底しています。

痛みを抑えた丁寧な処置

治療の際には、麻酔をしっかりと効かせてから処置を始めますので痛みを感じることはありません。

目で見てわかる安心感

治療前には口腔内カメラを使い、ご自身の虫歯の状態をモニターでご確認いただきます。

拡大視野による精密な切削

治療中は、歯科拡大鏡（ルーペ）やマイクロスコープで常に視野を拡大しています。

虫歯だけを染め出す「う蝕検知液」の使用

虫歯に感染した歯質のみを赤く染め出す薬剤を使用します。

神経を守るためのMTAセメント

虫歯が神経の近くまで及んでいる場合、神経を保護する効果を持つ薬剤を使用します。

歯に優しい手用器具の併用

虫歯の除去は「エキスカベーター」という手用の器具を使い、感触を確かめながら丁寧に取り除きます。

即日で完了するダイレクトボンディング

虫歯を削った後の穴は、多くの場合「ダイレクトボンディング」という方法で修復します。 これは、歯科用の樹脂を直接歯に盛り付けて形を整えるため歯を削る量が少なく、型取りも不要で1日で治療が完了します。

C3：神経まで進行した虫歯

虫歯が歯の内部にある「歯髄（しずい）」、つまり歯の神経にまで達してしまった状態です。
歯髄が細菌に感染して強い炎症を起こすため、「何もしなくてもズキズキと激しく痛む」「温かいものがしみると痛みが長引く」といった症状が現れます。
この段階になると、虫歯菌に汚染された神経を取り除き神経が入っていた管（根管）の中をきれいに清掃・消毒する「根管治療」が必要となります。

歯の寿命を左右する、精密根管治療

根管治療は、歯の土台となる根っこの部分を扱う非常に繊細で重要な治療です。
この治療の精度が、その歯が将来的にどれだけ長く機能できるかを大きく左右します。 当院では、歯の根の中という肉眼では見えない世界の治療精度を高めるため、様々な機器を駆使しています。
根管治療は、保険診療でも行うことが可能です。
しかし、歯の根の中は非常に複雑な形状をしており、再発を防ぎ、歯の寿命を最大限に延ばすためには、より高度な設備と時間をかけた丁寧な処置が求められます。
当院では、マイクロスコープや歯科用CT、ラバーダム防湿などを全て駆使して行う、再発リスクを極限まで抑えた治療を「精密根管治療」として、自由診療にてご用意しています。
もちろん、保険診療の範囲内でも、私たちの持てる技術と思想に基づき、丁寧な治療を心がけます。 カウンセリングの際に、それぞれの治療法の違いや、患者様のお口の状態に合わせた適切な選択肢を詳しくご説明いたします。

マイクロスコープによる精密処置

歯の根の中は、非常に暗く狭く複雑な形状をしています。マイクロスコープで視野を20倍近くまで拡大することで、これまで見えなかった根管の入り口や汚れの取り残しなどを明確に確認しながら確実な治療を行います

歯科用CTによる三次元的な診査

根管の数や形、曲がり具合は歯によって、そして人によって全く異なります。歯科用CTで撮影することで、通常のレントゲンでは分からない根の立体的な構造や病巣の広がりを事前に正確に把握し治療計画を立てます。

ラバーダムによる感染防止

根管治療中に、細菌を含んだ唾液が根管内に入り込むと再感染の原因となります。治療する歯だけを「ラバーダム」というゴム製のシートで隔離し、無菌的な環境で処置を行うことで治療の成功率を高めます。

ニッケルチタンファイルの使用

根管内の汚染物質を除去する際には、「ファイル」というヤスリ状の器具を使います。当院では、しなやかで弾力性に富むニッケルチタン製のファイルを使用しており、複雑に湾曲した根管の隅々までしなやかに追従してきれいに清掃することが可能です。

MTAセメントによる緊密な充填

根管内をきれいにした後は、再び細菌が入り込まないよう隙間なく薬剤で密閉します。当院では、封鎖性に優れたMTAセメントを用いることで根管の隅々まで緊密に充填し、再発のリスクを低減します。

精度の高いかぶせ物の製作

管治療後の再発率を軽減するためには、根管治療の精度だけでなく、かぶせ物の精度も重要となります。当院では、一つひとつの工程にこだわり、精密なかぶせ物の製作に努めております。

C4：歯の根だけが残った状態

虫歯によって歯の頭の部分（歯冠）がほとんど溶けてしまい、歯の根だけが残っている状態です。
神経は既に死んでいるため、痛みを感じることはありませんが歯の根の先に膿が溜まり、歯茎が大きく腫れることがあります。 この段階では、抜歯となる可能性が高くなります。
しかし、当院では歯の状態によっては、抜歯を回避するための以下の選択肢も検討します。 要となります。

抜歯を回避するための選択肢

歯根端切除術（しこんたんせつじょじゅつ）

通常の根管治療では改善できないほど、歯の根の先に大きな膿の袋ができてしまった場合に行う外科的な処置です。 歯茎側から直接、感染した根の先端と病巣を取り除くことで歯そのものを救える可能性があります。

エクストルージョン（歯根挺出術）

虫歯が歯茎の下深くまで進行し、被せ物を作ることができない場合に行います。
矯正的な力で歯の根を歯茎の上まで引っ張り上げることで、被せ物の土台を確保し抜歯を回避する方法です。

歯を残すことが必ずしも最善とは限らないケース

私たちは、あらゆる知識と技術を駆使して、患者様ご自身の歯を一本でも多く残すことを第一に考えています。
しかし、歯の状態によっては、多くの時間と費用をかけて根管治療を行っても、数年で再発してしまい、最終的に抜歯に至ってしまうことが予測されるケースも、残念ながら存在します。特に、歯の根が割れていたり、あまりに広範囲にわたって細菌感染が広がっていたりする場合です。
そのような場合には、無理に歯を残すことが、かえって周囲の骨をさらに失う原因にもなりかねません。
当院では、歯科用CTによる精密な検査などで、その歯を長期的に残せる可能性を慎重に見極めます。
そして、もし根管治療による保存が難しいと判断した場合は、その理由を包み隠さずご説明し、より長期的に安定して機能する「インプラント治療」という選択肢を、正直にご提案することもあります。
その歯一本のことだけでなく、お口全体の未来を考えた上で、患者様にとって本当に価値のある治療は何かを、私たちは常に追求しています。 要となります。

虫歯・根管治療についてよくある質問